“《Summer Pockets》 Short Story~在夏日的绚烂之中~加纳天善篇”的版本间的差异

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2020年5月8日 (五) 08:26的最新版本

《Summer Pockets》 Short Story~在夏日的绚烂之中~

加纳天善篇】

译者:书书

日本語 中文

<卓球道、その始まり>

「ふっ……! ふっ! ふっ! ふっ! はあっ!」
 10㎏の重りを付けたラケットの素振り千回を終わらした頃。
 秘密基地の隙間だらけの壁から、光が差し込んでることに気づく。
 朝日のようだ。
「……また徹卓をしてしまったか」
 眼鏡を外し、額から伝う汗を拭う。
 卓球台に置いておいた水を一口含んでゆっくりと飲み込む。
 すでに常温となっていた水は、それでも特訓で熱くなった体によく染みる。
 1度家に帰るか。
 いや……、帰ってしまうとそのまま眠ってしまうだろう。
 そのくらい体を痛めつけている自覚はある。
「それでも届かない場所がある……遠い物だな」
 いや、もしかしたら今の俺ならば……
 秘密基地の奥にしまっておいた俺と良一の玩具箱を引っ張り出す。
 ミニ四駆やハイパーヨーヨー、修学旅行で買ったヌンチャク……そんな子供時代の思い出のさらに下にある古びたラケットを手にする。
 普段使っているシェークハンドとは違う形。
 ペンホルダーと呼ばれる、昔ながらのラケットだ。
 それも片面だけにラバーが貼られている、日本式。
 今ではもう、これを使う選手もそう多くはない。
 だが、俺はこのラケットを使っていた「奴」には勝てないままだった。
 日ペンラケットを握る。
 親指と人差し指を使った、文字通りペンを持つような握り。
 久しぶりなのに、どこか馴染む感触だ。
 俺の原点もまたこのラケットだったのだから当然かもしれない。
 ピンポン玉を高く上に投げて、サーブをする。
「必殺! ドラゴンスレイブ!!」
 強烈なフォアハンドでの打球。
 強烈なトップスピンが空気との摩擦を生み、まるで龍の咆吼のような音を上げる。
 が、相手コートには落ちず、真っ直ぐ秘密基地の入り口に伸びていく。

 パッカーーーン!!

「ぎゃあっ!」
 ちょうどやってきた鷹原の額に軽快な打撃音を与えた。
「顔面セーフか」
「アウトだ! つーか今のなんだよ! なんで遊びに来てそうそうピンポン玉をぶつけられるんだ! 帰れってことか?! 俺メンタルそんなに強くないから泣きながら帰るぞ!」
 額にピンポン玉と同じ大きさの赤い腫れを作った鷹原が批難めいた声を上げた。
「すまない、悪気があったわけじゃない。ただ……」
「ただ?」
「避けられないお前が悪い」
「悪びれろよ!」
「だからすまないと言ったが?」
「後に続く言葉で台無しだ!」
 鷹原はこの夏休み、加藤のおばーさんの遺品整理の為に島にやってきた都会の人間。
 何かワケアリのようだが、そこは深く訊いていない。
 誰にでも人に話したくないことは、1つや2つあるものだから。
「つーか、さっきの奥義、新しかったな? 初めて聞いたぞ」
 彼はよく俺の特訓に付き合ってくれている。
 だから、今の技に違和感を覚えたんだろう。
「あれは奥義じゃなく、必殺技だ」
「……? 違うのか? 確かに必殺って言ってたけど、なんか子供っぽいな」
「当然だ」
 俺は日ペンラケットを見つめて呟く。





「子供の考えた技だからな」
「……? ワケアリ、なのか?」
「そんな大仰なものじゃない。だが……」
 このタイミングでやってきた彼に何かしらの意味があるとすれば。
 語ってみても良いのかもしれないな。
 俺は鷹原を真っ直ぐ見つめる。
「少し話を聞いてくれないか」
「お、おう?」
「俺がどうして、卓球をしているのかを」
「おお、それは興味があるな。おまえがここまで卓球にのめり込んだ理由って気になっていたんだ」
「そうか」
 屈託無く笑う鷹原から視線を外し、俺は再度手にしていたラケットを見つめる。
「ある男の子の話だ」
「うんうん」
「そいつは子供の頃から内気で……ひ弱で」
「うん……うん?」
「体育の時間に誰かと二人組になるのも恥ずかしがるような奴だった」
「待って」
 鷹原がこっちに手の平を向けて、俺の言葉を遮る。
「どうした?」
「その話のくだり、聞き覚えがある。いや、ちょっと違うんだけど……確認するが、これって良一の話じゃないよな?」
「違う。俺の話だ」
「そうか……、話の腰を折ってごめん。続けて」
「ああ、どこまで話したかな……確か、そうだ、彼女は手の届かない、遠くに行ってしまったんだ」
「待って」
 また鷹原が手の平を向けて、言葉を遮った。
「跳んでる。すごい間が跳んでるうえに、かなり重要なネタバレも食らった」
「む? そうか、語りたいという気持ちばかりがはやってしまったようだ」
「体育の時間に誰かと二人組になるのも~、ってとこまでしか話してないから」
「そうだったな、すまない。とにかく彼は、内気でひ弱で恥ずかしがり屋だった」
 俺は昔を懐かしむように目を閉じる。
「小学校に図書室があってな。夏休みも、外で遊ばずにそこに入り浸って本を読んでいるような奴だった。友と呼べるような奴もいなかった」
 ふと見ると、鷹原が頭を抑えながら唸っていた。
「どうかしたか?」
「うー……うん、まあいいや。続けて」
「ああ、そこで女の子と知り合ったんだ。似たように、内気で本が好きな子だった」
「少しだけ、話すようになったんだな、本の話とか。で、ひそかに友達だと思っていたんだろ?」
「その通りだ。……話したことがあったか?」
「いや、気にしないで」
「とにかく、俺は少しだけ学校が楽しいと思えるようになってきた」
 俺は記憶にある小学生時代を深く思い出す。
 あの日も――、俺と彼女は図書室の奥の席で、向かい合わせに座って本を読んでいた。


「ねえ、加納くん」
 不意に呼びかけてくる声に、返事をしないで顔だけを上げる。
「本読んでるだけだと退屈じゃない?」
「でも、図書室は本を読む場所だから……」
「そうだけど、折角一緒にいるのに、ちょっと勿体ないよね」
 彼女は周囲を見回してから、声を潜めて言ってくる。
「いけない事、しちゃわない?」
「いけない事? それはしちゃいけない事だからしない方がいいんじゃないか?」
「そうなんだけど、だから楽しくなるんじゃないかと思って」
「……何をするんだ?」
 俺が話に乗ってきたことが嬉しかったのか、彼女はこれまで見せたことがないような笑顔になった。
 そして、鞄の中から筆箱をとりだし、さらにその中の消しゴムを手に取った。
「えへへ、消しゴム落とし」
 それは学教の休み時間、男子たちが賑やかにしているゲームだった。
 ルールは単純で、机の上で自分の消しゴムを指で弾いて、相手の消しゴムを机から落とすだけ。
 自分たちの実力で遊ぶクラスを決め「プロ級」は消しゴムを落とされたらその消しゴムは、落とした相手の物になるというシビアなもの。
 中には新品の消しゴムを一回の試合で奪われて、泣きべそをかく奴もいた。
 内気な俺は、とてもじゃないけどそんな賑やかな場に混ざる事なんてできなかった。
 それでも、楽しそうだなと……離れた場所から見ていた。
 それは彼女も同じだったんだろう。
 だから、俺の心は躍った。ずっとやってみたかったゲームだから。
「わかった、やってみよう」
 俺も筆箱から消しゴムを取り出して、机の上に置く。
「でも、静かにな。ここは図書室なんだ」
「もちろん。いけない事はこっそりするから楽しいんだもん」
 彼女はウィンクをしながら自分の消しゴムを机に置いた。


「消しゴム落としか、懐かしい遊びだな」
 鷹原が懐かしむように言った。
「都会でもやっていたのか?」
「あれは小学生なら、誰でも通る遊びじゃないか?」
「なるほど、都会だろうと島だろうと子供の頃はみんな同じということか」
「ああ、でも俺たちは指で弾かなかったな」
「ならどうやって消しゴムを動かしていたんだ?」
「ノック式のボールペンの、上の部分で弾いてた。中のバネを二重にして威力をあげたり見えない部分で改造とかしてたんだ」
「メカニック級か」
「鳥白島ではそう言うのか?」
「一部の金持ちたちに許されたクラスだ。主に徳田やその取り巻きがやっていた」
「あー、徳田スポーツのあいつか」
「とにかく、そんなささやかな遊びが楽しかったんだ。みんなが普通にしていたことが俺たちにはできなかったからな」
 そこまで言って、俺は唇を噛む。
「だが、それも長くは続かなかった……」
「何があったんだ?」
 鷹原の問いに、俺はまた遠い目をして幼い日の事を思い出す。


 学校の机よりも広く、天板につや出し加工を加えられていた図書室の机は消しゴム落としを白熱させた。
 少しの力でも良く滑り。
 学校でみんながやっていた物よりも楽しく見えた。
 いや、楽しかった。
 だから、二人とも夢中になりすぎた。
「くらえーーー! ドラゴンスレーーーイブ!」
「ぐわああああーーー! 俺の消しゴムが真っ二つにーーーーー!」
「図書室では静かにしなさい!!!」
 図書室を管理している先生にめちゃくちゃ怒られた。


「俺たちは泣きそうな顔になりながら、二人で謝った」
「そりゃ図書室で叫んでたら怒られるわ。って、ドラゴンスレイブがここで出てきたか。消しゴムが真っ二つってどういう技? 本当に消しゴム落としか?」
 鷹原が呆れ半分、興味半分といった顔で訊いてくる。
「子供の遊びだ。必殺技の名前を叫べば強くなれるような気がするだろう」
「いや、でも消しゴムが真っ二つになったんだろ?」
「一定以上の力が加われば、消しゴムなんて簡単に折れるだろ。つまりはそういうことだ」
「ん? んんー……? そういうものか?」
 俺の説明に鷹原は納得していない顔だ。
「とにかく、俺たちの消しゴム落としはこれで終わってしまったんだ。そしてまた二人で本を読む日が続いた」
 俺は記憶にある小学生時代をまた深く思い出す。
 あの日も――、俺と彼女は図書室の奥の席で、向かい合わせに座って本を読んでいた。


「ねえ、加納くん」
 彼女の声に、返事をしないで顔だけを上げる。
「本読んでるだけだと退屈じゃない?」
「図書室は本を読む場所だし、前にうるさくして怒られたばかりだろ」
 俺は声を小さくして答える。
「そうだけど、折角一緒にいるのに、ちょっと勿体ないよね」
 彼女は周囲を見回してから、声を潜めて言ってくる。
「またいけない事、しちゃわない?」
「消しゴム落としはもうしないぞ」
「もっといけない事」
 彼女はそう言って、カバンからいくつかのビー玉を取り出した。
「これなら、少しの力で机の上を転がるから、静かに対戦できるよ」
 俺は気づくべきだった。
 彼女は“もっと”いけない事だと言っていた。
 つまり、消しゴム落としよりも、いけない事だったんだ。
 だけど俺は、彼女の提案するゲームの方が気になっていた。
 楽しそうに思えたんだ。
「……1回だけなら」
 そう答えた俺に、彼女は本当に嬉しそうな笑顔を向けてくれた。
 ビー玉対決は、あっという間に白熱した。
「くらえーーー! ドラゴンスレーーーイブ!」
「ぐわああああーーー! 俺の爪がーーーーーーー!」
「図書室では静かにしなさい!!!」
 図書室を管理している先生にめちゃくちゃ怒られた。


「俺たちは泣きそうな顔になりながら、二人で謝った」
「またドラゴンスレイブが出てきたぞ? 消しゴムを真っ二つにする技じゃなかったのか?」
「俺の爪が真っ二つになった」
「ああああああーーー! 痛い痛い! 想像させるな!」
「ともかく、俺たちはまた先生に謝った。特に俺は泣きながら謝った」
 思い出すだけであの頃の痛みが蘇る。俺はそっと右手の人差し指を握った。
「次、騒がしくしたら、出入りを禁止するとまで言われてな」
「そりゃそうだわ」
「だから、おとなしく本を読むことにした。だが彼女は再度言ってきた、本読んでるだけだと退屈じゃない?と」
「その子、学習能力ないのか?」
 鷹原が明らかに呆れた顔をしていた。
「ああ、全くの同感だ。もちろん、俺は断った。消しゴム落としも、ビー玉転がしもしないと……だが……」
「だが?」
「彼女が俺に見せてきたのは、古びたピンポン玉だった」
「あ、ここでようやく卓球に繋がったか」
「ふっ……卓球などと呼べるようなものじゃなかった。ルールさえろくに知らなかったんだからな」
 俺はあの時のことを思い返すように、自前のピンポン玉を握った。
「広い机をコートにして、ネットの代わりに本を立てて、ラケットの代わりに本を使った」
「……図書室で考え得る限り最悪な遊びだな……」
「ああ、白熱した」


 コン……カコン、コン、……カコン

「加納くん、打ち合いが続くようになってきたね」
「ああ、よく分からないけど、気分が良い」
「じゃあ、少しだけ本気だすよ?」
「望む所だ」
「くらえーーー! ドラゴンスレーーーイブ!」
「あああああああーーーー! 先生の眼鏡が真っ二つにーーーー!」


「俺たちは、走って逃げた」
「最悪っていうか、最低だな……」
「ふっ……若さ故の過ちだな。こうして俺たちは図書室という憩の場を奪われてしまった」
「いや、完全に自業自得だろ。なんで被害者ぶってるんだよ」
「けれど、転機というのはどこで訪れるのかわからないものだった」
「……?」
「翌日、俺たちは職員室に呼び出された。そこで言われたんだ、卓球をやらないか、と」
 捨てる神有れば拾う神有り。
 俺たちのラリーを見て、可能性を感じたと言う者が現れた。
 誰かから認められるというのは初めての事で、戸惑いしかなかった。
 だけど、自分たちを見てくれている人が居たということが嬉しくて。
 俺と彼女は、二つ返事で承諾した。
 俺たちの居場所は、図書室から体育館へと変わったんだ。


 学校の体育館では、島民たちのレクリエーションとして卓球が行われていた。
 年寄りたちや、主婦たちが楽しそうにピンポン玉を打ち合っていた。
 山なりの軌道でゆっくりとした卓球を楽しんでいる者。
 筋肉に任せて、直線的な弾道で打ち合いをしている者。
 ただ、総じてみんな笑顔だった。
「ふわーー、これが卓球かー」
「俺たちがこんな場所にいてもいいんだろうか」
「誘われたんだからいいんだよ。はい、これラケット」
「四角くて持ちにくいんだな」
「ペンホルダーっていうらしいよ」
 彼女は親指と人差し指でわっかを作って、ラケットを握ってみせる。
 俺もそのマネをしてラケットを握った。
 意外としっかりと手に固定できる。
「卓球、知ってたのか?」
「ううん、ちょっとだけ先に勉強してみたの。加納くんに教えてあげようと思って」
「……俺に卓球なんてできるんだろうか?」
「物は試し、図書室でやってた交互に打つやつ、やってみよ」
「ウォーミングアップだな」
「うん」
 初めて立つ卓球台。ネット越しに見える彼女の姿。
 目に映る物全てが初めてな物ばかりで、胸がときめいた。
「いくよー」
「こい!」
「くらえーーー! ドラゴンスレーーーイブ!」
「そう来ると思ったぞ!」
 彼女の行動を読んでいた俺は、真っ直ぐ飛んでくるピンポン玉を的確に打ち返した。
 ピンポン玉を打ち返す時の心地よい音。
 腕から体まで伝わる小気味よい衝撃。
 何かに目覚めたような気分だった。
 いや、ずっと欠けていた何かがカチっとはまったような気分だった。
「やるね、加納くん! たーーーーー!」
「なんの! まだまだっ!」
 カン! カン! カン! と、ピンポン玉をラケットでお互い打ち返し続ける。
 だが、やはり俺たちはまだきちんとルールを理解していなかった。
 ピンポン玉を卓球台にバウンドさせること無く、ただ打ち返しているだけだった。
 やっていることは卓球の道具を使った羽子板。
 だけど、そんな打ち合いを島の大人達は面白そうに見ていた。
 ──まずは楽しめ。
 そう、教えてくれた。
 その楽しさの中に、競技としてのルールを加えていく。
 サーブを打つときは、まず自分のテーブルでワンバウンドさせること。
 ピンポン玉を打ち返すのは、自陣でワンバウンドしてから。
 ただ打ち返していただけに比べて、考えながら打つことが増えていった。
 だけど、バウンドさせなければいけないことを、マイナスで無くプラスで考えることも教えて貰った。
 ピンポン玉に強烈な回転を加えることで、バウンドした後の方向を変化させることが出来る。
 そうなれば、次はどのくらい回転を加えるかという駆け引きも生まれる。





「必殺! ドラゴンスレーーーイブ!」
「くっ!!」
 彼女の放つあり得ない曲線軌道のドライブスマッシュは、バウンドする度に違う方向に飛んでいく。
 どうしても俺のラケットでは捉えることが出来なかった。
「ふふーん、これで98連勝! まだやる?」
「と、当然だ!」
 才能と言う奴だろうか。
 正しいルールで卓球を始めてから、俺は彼女に1度として勝つことが出来なくなっていた。
「たーーーー! ドラゴンスレーーーイブ!」
「ぬおおおおおお!」
「はい、99連勝ーーーー!」
「も、もう1戦! 頼む!」
 俺はラケットを握りしめながら、彼女に頭を下げる。
「うーん、でもちょっと疲れちゃったかな」
「ならばこそのチャンス!」
「うわ、そこは全力のお前を倒してこその勝利の価値とかじゃないの?」
「勝つ為に最善を尽くすのが礼儀だろう」
「格好いいセリフだけど、かっこ悪い」
 彼女はやや引きつった笑みを浮かべていた。
「ちょっと休憩しない?」
「わかった。だが、お前の体力が回復しきらない程度で頼む」
「あはは、本当に勝つのに必死だね」
 彼女は笑いながら、その場にペタンと座った。
 呼吸を整えるようにゆっくりと大きく息を吸う。
「加納くんはやっぱり男の子だね。最近、体力の差を感じるよ」
「俺はただ負けたくなくて1人で特訓をしているだけだ」
「そうだね、だけどやっぱり男の子と女の子じゃ、決定的な差があるよ」
「だが、俺はまだおまえに勝てていない」
「私も必死だから。加納くんに負けたくないって気持ちで一杯なんだよ」
 勝ちたい気持ちと、負けたくない気持ち。
 どちらの方が勝利に結びつくのだろうか。
 少なくとも、俺が勝てていない以上、負けたくない気持ちの方が強いのかもしれない。
「ふふ、くすくす」
「どうしたんだ? 急に笑いだして」
「ううん、なんだか不思議だなって思って」
 彼女は遠くを見つめるような目で体育館の外を見た。
「図書室にしか居場所がなかったはずなのに、こんなに体を動かして楽しい気持ちになれてる」
「ああ、それは俺も同じだ」
「加納くんと一緒だから、楽しいのかな」
 そう言った彼女の顔は少し赤かったように見えた。
 だが俺は、彼女の言葉に戸惑いすぎて、きちんと顔を見ることが出来なかった。
 素直にもなれなかった。
「俺は、負けてばかりで楽しいとは言えない」
 そう答えることで精一杯だったんだ。
 だけど、この胸の高鳴りはなんだろう。
 この子と一緒に居るときは、いつもの自分とは違う自分でいる気がする。
 変に強がって、無理に格好いいところを見せたいと思ってしまう。
「私、加納くんともっと色々な事がしたいな」
「色々な……事?」
「消しゴム飛ばしから始まって、ビー玉転がしをして、今はこうやって卓球を一緒にしてる」
「そうだな」
「もっと、加納くんと……コホコホ……」
「……? どうした?」
「ううん、なんでもないよ。それより勝負は明日ね」
「なに?」
 彼女は立ち上がると、深呼吸をする。
「実は今日はちょっと用事があるの。だから勝負は持ち越しで」
「わかった。全力のお前を倒してこその勝利の価値だからな」
「それ、もっと早くに言わないと」
 呆れたように、彼女は肩をすくめる。
 だけど、すぐに真っ直ぐ俺を見つめた。
「……あのね、加納くん、私が100勝したら聞いて欲しいことがあるの」
「次の1勝は俺が貰うから難しいかもしれんな」
「あー、言ったなーー」
 彼女が笑い、俺も笑った。
 俺たちは確かに友達で、そしてそれ以上の繋がりを感じていた。


「でも、俺は……気づいてやれなかったんだ」
 未だに俺はあの時のことを悔いている。
 無理にでも試合をしておくべきだった。
「何があったんだ?」
 俺の声が沈んでいることに、鷹原は心配そうな顔をする。
「翌日、俺は体育館で彼女が来るのを待っていた。だが、来なかった」
「来なかった?」
「その次の日も、そのさらに次の日も。俺は彼女が来るのを待ち続けた」
「彼女に何があったんだ?」
「言っただろう。彼女は手の届かない、遠くに行ってしまったんだ。もう、この世界に彼女はいない」
 俺は窓の外を見ながら、呟くように言う。
「結局……、俺は彼女から1勝することは叶わなかった」
「だからなのか?」
「何がだ?」
「それ以来、ずっと卓球を続けて、いつか彼女に名前が届くようにって」
「そうだな……、届くといいな」
 窓の外の、さらに遠く──、空を見上げる。
 鷹原も察してくれたんだろう、それ以上は踏み込んでこようとはしなかった。
「おーっす、と、おっ? 羽依里ももう来てたのか」
 手に何かを持った良一が秘密基地に入ってきた。
「良一? 何を持ってるんだ?」
 鷹原が良一が持っている物を指差して訊ねる。
「へへ、ラジオだ。折角だからここで聞こうと思ってな」
「何かのニュース?」
「いーや、試合だ」
 鷹原の問いに、良一はラジオの電源を入れる。
 チューナーのバンドをあらかじめ合わせていたのか、すぐに音声が聞こえてくる。
『ドラゴンスレーーーーーイブ!』
「なぬ!?」
 ラジオから聞こえてきた音声に、鷹原が素っ頓狂な声を上げる。
『全日本女子テニス大会、決勝戦、1セット目をストレートで先制したのは斑鳩麗選手!』
「は~、麗のやつ絶好調だなー」
「え? 知り合いなのか?」
「麗はこの島出身で同い年なんだけど、すでにプロのテニスプレイヤーなんだ」
「へえ、鳥白島出身のプロテニスプレイヤーか」
「小学校の時に親の都合で急に引っ越しちまったんだけどな。ああ、転校直前までは天善と卓球やってたぜ」
「へえー……え?」
「結構なドジッ子でさ、親と本土に遊びに行くと思ってたら実は引っ越しだったってオチよ」
 良一の説明を聞いた鷹原がいぶかしげな顔で、俺の方を見る。
「ひょっとして……天善、さっき話していた彼女って……」
「言ったはずだ。もう、この卓球界(せかい)に彼女はいない、と」
「紛らわしいわ! 意味深な咳はなんだよ! 卓球やってたのに何でテニスなんだよ!」
「愚問だな。消しゴム落とし、ビー玉転がし、卓球、セパタクローとくれば、次はテニスに移行してもおかしくない」
「今おかしいのが間に入った! 彼女、本土に渡ってから何してるんだ? なんでタイの国技? つーか! すっげー初恋みたいな流れだったじゃねえか! 勝ったら告白みたいな感じだったじゃねえか!」
「そうだな、あの当時ならそうしたかもしれんが……、今は無理だ」
 俺は深くため息を吐く。
 そんな俺の仕草に、鷹原は目を細める。
 何かに気づいたように。
「やっぱり、勝てなかったから、なのか?」
「いや」
 俺は静かに、でもしっかりと首を横に振る。
 そして鷹原を真っ直ぐ見据えて言った。
「残念ながら、彼女の胸のサイズは俺に響かん」
「……え?」
「年月というのは残酷だ。才能を伸ばしても、肉体を成長させるとは限らないのだからな」
「おまえ、結構サイテーだな……」
 鷹原の蔑んだ目を尻目に、俺は自分のラケットを手にする。
 かつて俺は、内気でひ弱で恥ずかしがり屋だった。
 図書室に入り浸って、友と呼べるような奴もいなかった。
 それでも、彼女との出会いで卓球と出会った。あの頃に比べ友達もできた。
 小さなきっかけだったけど、俺にとっては、世界を変えるくらいの出来事だった。
 そして、やはり初恋だったんだろう。
 だから──、俺にとって卓球は特別な物のままだ。
「さて……」
 俺は気を取り直して、いつものラケットを握り直す。
「今日も特訓をやるのか?」

<乒乓球道的起点>

「呼……! 呼! 呼! 呼! 哈!」
 刚刚绑着10kg的沙袋完成了1000次挥拍。
 发现从秘密基地的墙壁缝隙中,传来了丝丝光芒。
 看来是朝阳啊。
「……又练了一个通宵啊」
 脱下眼镜,擦了擦汗水。
 拿起放在乒乓球桌上的水,一口一口地喝下去。
 已经变成常温的水,也因为特训而火热的身体变得温暖起来。
 干脆回一趟家吧。
 算了……回去的话估计就直接躺下睡着了。
 我还是有能够磨砺自己身体的自觉的。
「然而这样也不能到达那一步啊……还真是遥远」
 等下,说不定现在的我……
 从秘密基地的深处拉出了放着我和良一童年玩具的箱子。
 迷你四驱、悠悠球、修学旅行时买的双节棍……我拿出了比那些还要有年代感的乒乓球拍。
 这并不是那种横拍。
 应该说是以前的那种直拍。
 况且还是日本式的那种单面贴胶的。
 现在已经没有多少选手使用这种球拍了。
 然而,我却至今没有胜过用这个球拍的那个人。
 我握紧了日式直拍。
 把食指和大拇指交叉,仿佛在握着笔一样。
 明明很久没这么握了,但还是有点熟悉。
 或许因为这球拍就是我乒乓球的起点吧。
 我将乒乓球高高抛起,再扣杀。
「必杀技! 龙之怒吼(dragon slave)!!」
 强烈地向前击球。
 球带着强烈的旋转,发出了如同龙怒吼般的声音,向前飞去。
 然而,并没有落到对方的区域,而是直接飞向了门。

 乓————!!

「呃啊————!」
 正好打在了刚好过来的鹰原的额头上,发出了清脆的响声。
「面部接球啊」
「出界啦! 还有这咋回事啊! 为啥我来玩你就用乒乓球打我啊! 叫我滚吗?! 我内心很脆的,说不定就哭着回去了啊!」
 鹰原顶着额头上那乒乓球大小的於肿,一边发起牢骚。
「不好意思,我并没有恶意。只是……」
「只是?」
「你怎么不躲开啊」
「还怪我啊!」
「所以我不是说了不好意思吗?」
「后面的话让这句白说了好吗!」
 鹰原他是为了在这个暑假来整理加藤奶奶的遗物,从城里过来的。
 虽然看起来似乎有点隐情,不过还是没有深究。
 毕竟谁都有一个两个不愿意和人坦白的秘密。
「话说啊,刚才的那个奥义,是新招? 头一回听到」
 他经常和我一起特训。
 所以才能发现刚才那招的些许不同吧。
「那个可不是奥义,是必杀技」
「……? 有区别吗? 好像确实是说着必杀技,不过感觉那个很小孩子啊」
「当然了」
 我看着日式直拍说到。



「这就是小孩子想出来的技能啊」
「……? 有故事吗?」
「那也不是啥大不了的,只是……」
 如果这对这时候来的他来说有什么意义的话。
 兴许和他说说也不错。
 我径直地看向鹰原。
「能稍微听我说点东西吗」
「哦,哦?」
「我为什么要去打乒乓球」
「哦,那还真得洗耳恭听啊。我还真的挺在意你为啥要在这打球呢」
「是吗」
 我把目光从鹰原上移开,又看起了手中的球拍。
「那是一个男孩子的故事」
「嗯」
「那人从小时候就就很内向……也很弱气」
「嗯……嗯?」
「已经害羞到体育课都不愿意和别人组队了」
「等一下」
 鹰原把手掌伸过来,打断了我。
「怎么了吗?」
「那展开,总感觉听过。不对,稍微有点不一样啊……确认一下,这不是良一的故事吧?」
「不是。那是我的事情」
「是吗……中途打断不好意思,继续吧」
「行,刚才说到哪里了呢……对了,她已经去往我再也够不到的地方了」
「等一下」
 鹰原又把手掌伸过来,打断了我。
「太跳跃了。不仅时间跳了不少,感觉还被强行剧透了重要部分啊」
「嗯? 是吗,太想说了结果说太多了」
「大概说到了体育课不愿意和别人组队吧」
「讲到那里了啊,抱歉。总之,他因为很弱气,就跑到图书馆里了」
 我似乎是在怀念过去一般地闭上了眼睛。
「小学里有个图书室的。他可是个在暑假都能一个人泡在书里的家伙。自然也没有朋友了」
 瞥了一眼,鹰原抱着脑袋在喃喃自语。
「怎么了吗?」
「没……没事。你继续」
「啊,他在那里认识了个女孩子。她是个和他一样,又内向又喜欢书的人」
「然后他们就慢慢说上话了,比如聊聊书本,然后就差不多是朋友那种感觉了?」
「没错……这我说过了吗?」
「没事,别在意」
「总之,我也觉得学校是有点乐趣了」
 我开始回想起小学时代。
 那天也是――我和她坐在图书室最里面的桌子,面对面地读书。


「我说,加纳」
 突然听到她搭话,我默默地抬起了头。
「光是看书也太无聊了吧?」
「可是,图书室不就是看书的地方吗……」
「说是这么说,可是难得都在这里,不玩也太无聊了」
 她扫了一眼周围,低声说到。
「要不要做些不能做的事情?」
「不能做的事情? 因为是不能做的,所以不做比较好吧?」
「说是这么说,说不准能开心点呢」
「……要做什么啊?」
 说不准她看我能一起说话感到开心了,她脸上是我从来没见过的笑容。
 然后,她从背包中取出笔盒,拿出了里面的橡皮。
「来来来,弹橡皮吧」
 那个是学校的男生们在课间最喜欢的游戏了。
 理由很简单,双方在一张桌子上,只要把对方的橡皮弹下桌就足够了。
 根据自己的实力来决定一起玩的人的等级,比如“专家级”,如果说一方的橡皮被弹下了桌子,那么橡皮就要归弹下它的人所有。
 自然也有刚刚买的橡皮被别人拿走,结果还哭出来的人。
 内向的我,自然也说不上能够混进去一起玩。
 不过,还是觉得那很有趣……所以经常隔着一点距离围观。
 估计她也是一样的吧。
 所以,我也变得兴奋了,因为我一直就想玩玩这个游戏。
「明白了,来玩吧」
 我从笔盒里拿出橡皮,放在了桌上。
「不过还是小声点吧,毕竟这里是图书室」
「当然了,不能做的事情就是要悄悄做才有趣嘛」
 她嘴角一扬,把她的橡皮放在了桌子上。


「弹橡皮啊,好怀念啊」
 鹰原似乎也在怀念什么。
「城里也玩的吗?」
「难道不是小学生都会玩的吗?」
「原来如此,无论是城里还是岛上,孩子们都喜欢玩啊」
「那是,不过我们不是用手指弹的」
「那么用什么啊?」
「那种能按压的圆珠笔的上面那东西。甚至还有人把里面的弹簧加了一根,从而让威力加倍的」
「机械工级的吗」
「在鸟白岛是那么说的吗?」
「应该说是一部分有钱人的玩法吧。主要是德田和他的伙伴们会这么玩」
「啊,德田体育的那家伙啊」
「总之就是,我们就是做不到对其他人来说很平常的事情」
 说到这里,我咬了咬嘴唇。
「可是,那也没能持续多久……」
「出什么事了吗?」
 听着鹰原的提问,我又一次看向远方,回想起小时候。


 图书室的桌子远比课桌要更大更光滑,所以这也让弹橡皮变得更激烈了。
 只要稍稍用力就能弹很远。
 感觉比学校里的大家玩的还要开心。
 不,真的很开心。
 所以,两人都过于兴奋了。
「接招————! 龙之怒吼————!」
「唔啊啊啊啊啊啊啊——! 我的橡皮成两半啦————!」
「在图书室都安静点!!!」
 被管理图书室的老师狠狠教训了一顿。


「到头来,我们一边哭着一边道歉了」
「毕竟在图书室喧哗,不被骂才怪。不过,那个龙之怒吼就是从这出来的啊。不过把橡皮分成两半是啥啊? 那真的是弹橡皮吗?」
 鹰原半发愣半好奇地问到。
「毕竟是小孩子嘛。喊着必杀技的名字,感觉就变强了不是吗」
「不是,橡皮不是成两半了吗?」
「只要稍微上点力,橡皮很容易就断成两半了吧,总之就是那么回事」
「嗯? 嗯……? 是那样的吗?」
 鹰原看来是不认同我刚才的说明啊。
「总之,我们的弹橡皮就到此为止了。然后又是二人读书的日子」
 我开始回想起小学时代。
 那天也是――我和她坐在图书室最里面的桌子,面对面地读书。


「我说,加纳」
 突然听到她来搭话,我默默地抬起了头。
「光是看书也太无聊了吧?」
「图书室本来就是看书的地方啊,而且才不是被老师骂了吗?」
 我小声回答到。
「说是这么说,可是难得都在一起,光看书有点不值啊」
 她看了看周围,低声说到。
「要不要,再做点啥?」
「弹橡皮啥的我可不玩了」
「更加厉害的事情」
 她一边说着,一边从书包里拿出了好几个弹球。
「这玩意的话,只需要很小的力气就能在桌子上玩了,来玩吧」
 我这时才发现。
 她说的是‘更加’厉害的事情。
 也就是说,这个比弹橡皮更加过分。
 然而,我却更加在意那个游戏的内容。
 因为看起来很好玩。
「……只玩一次的话」
 看着我这么回答,她笑得很是开心。
 弹球的对决,很快就白热化了。
「接招————! 龙之怒吼————!」
「呜啊啊啊啊啊啊! 我的指甲——————!」
「在图书室里请保持安静!!!」
 被管理图书室的老师狠狠教训了一顿。


「到头来,我们一边哭着,一边道歉了」
「那个龙之怒吼又出来了吧? 原来那不是把橡皮搞成两段的技能吗?」
「我的指甲成两半了」
「啊啊啊啊————! 好疼好疼! 别让我想象啊!」
「总而言之,我们又向老师道歉了。特别是我,还是哭哭啼啼的」
 光是回想就已经感觉到痛了。我默默握紧了右手的食指。
「当时还说,下次再闹腾,就别进来了」
「那肯定啊」
「所以,我们又开始老老实实看书了。可是她又说了,说光看书不无聊吗之类的」
「我说她,没有记性的吗?」
 鹰原明显已经无语了。
「是啊,我也这么觉得。当然了,我自然也都拒绝了。无论是弹橡皮,还是弹球……可是……」
「可是?」
「她拿出来的东西,是一颗很旧的乒乓球」
「啊,终于扯到乒乓球了啊」
「呼……其实也说不上是乒乓球吧。毕竟我也不怎么清楚规则」
 我似乎像是为了回想当时的情景,握紧了手上的乒乓球。
「把书桌当做球台,把书本当做网和球拍」
「……这怎么想,在图书室里算是没有更加过分的了……」
「是啊,超激烈」


 碰……碰、碰……碰

「加纳,看来你已经能跟得上了啊」
「是啊,虽然有点不懂,可是感觉好舒服」
「那么,稍微认真点?」
「正合我意」
「接招————! 龙之怒吼————!」
「啊啊啊啊啊——————! 老师的眼镜成两段啦——————!」


「我们直接逃走了」
「与其说过分,你们很差劲啊……」
「哼……毕竟太年轻了啊。总之,我们就失去了图书室这么个休憩场所」
「不是,你这不是自己作的吗。为啥搞得跟被害者一样」
「可是,转机就是那种不知何时才会到访的东西啊」
「……?」
「第二天,我们被叫到了办公室里。那时候就对我们说,要不要打乒乓球」
 柳暗花明又一村啊。
 一个看了我们的对打,认为我们有才能的人出现了。
 因为这是头一次被人认可,所以有点迷茫。
 可是,因为有人能够关注自己,我也很开心。
 我和她,很爽快地答应了。
 我们的空间,从图书室移到了体育馆。


 为了给岛民们提供消遣,体育馆里正在举行乒乓球赛。
 老人家们,还有不少主妇们,都在很开心地对打着。
 有喜欢拉出过山车轨道般享受乒乓球的人。
 自然也有纯靠肌肉暴力击球的人。
 不过,大家的脸上都洋溢着笑容。
「哇————,这就是乒乓球吗」
「我们真的能呆在这里吗」
「反正都是被拉过来的,没问题的。给,球拍」
「这柄四四方方的,不好握啊」
「好像是叫做直拍吧」
 她交叉着食指和大拇指,握住了球拍。
 我也学着她握住了球拍。
 很出乎意外地握住了。
「你学过乒乓球的吗?」
「不啊,只是之前学过一点。顺便就想着教给你了」
「……我能打得了乒乓球吗?」
「反正试试看呗,要不再像图书馆那样打一下?」
「当热身是吧」
「对」
 第一次走上乒乓球桌。透过球网所看到的她的身姿。
 映入眼帘的全都是崭新的东西,所以我的内心有种高昂的感觉。
「来了哦——」
「来吧!」
「接招————! 龙之怒吼————!」
「我就知道你会来这招!」
 我看穿了她的行动,成功把飞过来的乒乓球给打了回去。
 击回乒乓球时发出的声音是如此地令人舒适。
 从手臂传到身体上的那小小的冲击。
 我感觉似乎觉醒了什么。
 不对,应该说是把什么空缺给彻底掩埋上的感觉。
「可以嘛,加纳! 打————!」
「什么嘛! 再来再来!」
 碰! 碰! 碰! 球拍击球的声音一直持续着。
 不过,果然我们还是不懂乒乓球的规则。
 甚至都已经没有让乒乓球落到桌子上,仅仅是在互打而已。
 使用的道具是打乒乓球用的球板。
 不过,看着那群打球的大人也很开心的样子。
 ──总之打得开心就好。
 他们这么告诉我。
 在享受的基础上,再去理解规则。
 在发球的时候,首先要让求击打在己方的区域,然后越过球网。
 在击球的时候,就要直接打过去。
 比起仅仅是打回去,就需要更多的去思考。
 可是,如果不让球落桌,不是减分而是加分。
 如果让球带上旋转的话,在弹起后还能变向。
 那样的话,在下一次击球时又需要思考了。


「必杀技! 龙之怒吼————!」
「呃啊!!」
 她每次都能够在那堪称不可思议的击球后划出奇妙的曲线。
 我的球拍永远不能击打到那颗球。
「哼哼,这就是98连胜了! 还要打吗?」
「当,当然了!」
 应该说是天赋吗。
 自从开始正规地用规则打球之后,我就从来没有赢过她。
「打————! 龙之怒吼————!」
「唔哦哦哦哦哦哦————!」
「好,99连胜!」


「再,再来一次! 拜托了!」
 我紧握球拍,向她低下头。
「嗯——,可是我有点累了」
「那么就是这个机会!」
「呜哇,难道不是打倒使出全力的我才对吗?」
「为了胜利选取最优手段才是对的吧」
「虽然台词很帅,可你很逊啊」
 她稍微抽搐地笑了笑。
「稍稍休息一下吧?」
「明白了。可是请不要让你的体力恢复」
「啊哈哈,你为了赢还真的是拼呢」
 她一边笑着,一边坐在了地上。
 为了整理呼吸而大口地呼气。
「加纳果然是男孩子啊。最近都感觉到体力上的差距了」
「我只是因为不想输,所以一直在一个人特训」
「果然啊,男孩子和女孩子肯定是存在某种差距的啊」
「可是,我至今都没有赢过你啊」
「因为我也很拼啊。我也不想输给加纳君啊」
 想胜利的心,和不想输的心。
 到底哪边更强呢。
 至少对我来说,因为还没有赢过,所以应该是不想输的心占了上风吧。
「哼哼,哈哈」
「怎么了? 突然笑起来」
「没啥,只是突然觉得不可思议」
 她看向了体育馆的外面。
「本来以前我只能呆图书馆,可是能像这样活动身体还真的是开心啊」
「是啊,我也这么觉得」
「和加纳君一起,我才开心的吧」
 她这么说着,脸上也带了点红晕。
 可是我,因为听不懂她这话的意思,一直在纠结,也没看她的脸。
 我没能坦率起来。
「我可一直在输,说不上开心啊」
 能那样回答的我已经是尽力了。
 可是,这高昂的情感是什么呢。
 和她一起的话,我感觉我变得和以前不同了。
 总想着要耍帅,想要在她面前展示。
「我真的,还想和加纳君做更多的事啊」
「更多的……事?」
「从弹橡皮,到弹球,再到现在打乒乓......」
「是啊」
「还想,和加纳……咳咳……」
「……? 怎么啦?」
「没啥,没什么。顺便,下一场明天吧」
「什么?」
 她站了起来。
「其实今天还有事情要做。所以先延后啦」
「我知道了。击倒全力的你才能称得上是有价值的胜利」
「那句,你早点说啊」
 她很无语地耸了耸肩膀。
 可是,她马上又径直看向我。
「……那个,加纳,等我100胜之后,有话想跟你说」
「下一场胜利是我的所以很难啊」
「啊,你还真能说——」
 我笑了,她笑了。
 我们确实是朋友,还感觉到了在这之上的羁绊。


「可是,我.....应该注意到的」
 直到现在我也在后悔。
 当时应该无论如何都要继续打的。
「出什么事了吗?」
 我降低了声音,鹰原的脸色也开始担心起来。
「第二天,我就一直在体育馆等她,可是,她却没有出现」
「没有来吗?」
「无论是下一天,还是再下一天。我都一直在等她」
「她怎么了吗?」
「我说过了吧。我已经够不到她了,她已经去远方了。她已经不在这个世界了」
 我看着窗外,喃喃自语。
「结果,我连一场都没有赢过她」
「所以你才这样吗?」
「怎么?」
「从那之后就一直在打乒乓,希望哪天她能够听到你的名字」
「是啊......能听到就好了啊」
 透过窗外,看向远方——看向天空。
 鹰原也应该猜到了吧,他也没有再继续追问了。
「早啊,哦? 羽依里已经来了啊」
 良一手上拿着东西走了进来。
「良一? 你拿着啥呢?」
 鹰原指着良一手里的东西问到。
「嘿嘿,收音机啊,正好有东西想让你们听听」
「啥新闻吗?」
「不——是,是比赛」
 良一一边回答鹰原的问题,一边把电池装上。
 在些许调频之后,很快就传出了声音。
『龙之怒吼————!』
「啥!?」
 听到收音机里传来的声音,鹰原直接被吓得跳了起来。
『全日本女子网球大赛,决赛,斑鸠丽选手首先靠直球拿下第一局!』
「真的是啊~ ,丽的状态还真的不错」
「啊? 你们认识的吗?」
「丽她是鸟白岛本地人,和我们一样大,不过人家已经是职业网球手了」
「这样啊,鸟白岛出身的职业网球手」
「小学的时候因为父母的关系就搬到城里去了。对了,转学前一直在和天善打乒乓来着」
「这样啊……啥?」
「她还挺呆的,以为是要和父母去城里玩,结果是搬家」
 鹰原在听了良一的解释之后,用半信半疑的眼神看向我。
「我说……天善啊,你刚才说的女生难不成是……」
「我都说过了。她已经不在乒乓球这个世界里了」
「你搞什么啊! 为啥突然故作深沉啊! 为啥她打乒乓球打的好好去打网球了啊!」
「真是愚蠢。既然都有了弹橡皮、弹球、乒乓球、藤球的话,她再转去打网球也不奇怪」
「里面是不是混了啥奇怪的啊! 她去本土之后做啥了啊? 为啥是泰国国球啊? 还有——! 刚才听起来不是一股子初恋的味道吗! 难道赢了不就告白了吗!」
「是啊,如果是当时估计真的有可能啊……现在是不要想了」
 我深深地吐了口气。
 鹰原看我这样,眯起了眼睛。
 估计感觉到了什么吧。
「果然,是因为,你没有赢吗?」
「不是」
 我默默地,但是很用力的摇着头。
 然后径直看向鹰原回答道。
「非常遗憾,她的胸部并不能让我心动」
「……啥?」
「时间还真的是残酷。哪怕能力增强了,可是肉体却不一定也能成长」
「我说你,还真的是差劲啊……」
 我无视了鹰原鄙视的眼神,重新看回我的球拍。
 以前的我,又内向又害羞。
 泡在图书室里,也没有朋友。
 然而,和她与乒乓球的相遇,让我也逐渐有了更多的朋友。
 虽然只是小小的契机,对我来说,也是如同改变世界一般。
 然后,那也果然是初恋吧。
 所以,乒乓球仍然在我心中有着很重要的位置。
「那么……」
 我回到日常的样子,握紧了平常的球拍。
「今天也要来特训吗?」