《Summer Pockets》 Short Story~在夏日的绚烂之中~紬-文德斯篇

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《Summer Pockets》 Short Story~在夏日的绚烂之中~

紬-文德斯篇】

ハサマ

译者:书书

日本語 中文

<大切な人 大切にしてくれる人>

 八月の後半……。
 夏ももう、終わりを迎えようとしている時期のことでした。
 わたしは一人、灯台にいました。
 「こんにちは……わたあめさん」
 「シロハさん! どもです」
 「どうも……。ふたりは?」
 「今は出かけています。わたしのために、70年分のイベントをしてくれるということで、準備をしに行きました」
 「そう、なんだ。それ……私も、ちょっとだけだけど、参加することになってる」
 「むぎゅ! ありがとうございます!」
 「うん」
 シロハさんはそう言いながら、ぺこりと頭を下げて、手に持っている袋をわたしの方に差し出してきました。
 「これは、何でしょう?」
 「これは、パリングルスの空き容器」
 「おー……ありがとうございます」
 「あんまり、うれしそうじゃない?」
 「そんなことはありません。……ただ最近、ベランダを作ることを中断していたので」
 「そう、だったんだ……」
 「ですが、シロハさんにいただいたのであれば、べランディングを再開せざるを得ません。……やってやります!」
 「がんばって」
 そしてその袋の中から、まだ何かを取り出しました。
 「それは……?」
 「ネコのぬいぐるみ……。海で釣り上げた」
 「海にもいるもんなんですね」
 「海にもいるもんなんだね」
 そしてそれを、わたしに差し出してきました。
 「わたあめさん、ぬいぐるみを集めてたから、これもおみやげ……」
 「ありがとうございます! では、早速お名前を付けましょう! この子のお名前は……」
 「……名前は」
 「ソーセキさんです!」
 「ぴったりだね」
 「ですね」
 「でも、もっと……ウルトラとか、デュアルファングとか、ドラウニングマークエイトとか、そういうのを入れてもかっこいいと思う」
 「おー、それはかっこいいですね。特にドラウニングの部分は、彼の生きざまを表しているようです……」
 「わかる?」
 「はい! もうちょっと、がんばってかっこいいお名前にしようと思います」


 「それじゃあ、わたあめさん、ウルトラ・ソーセキ・ナンバーナイン・ドラウニング……またね」
 「はい! ウルトラ・ソーセキ・ナンバーナイン・ドラウニングさんのこと、大切にしますね」
 シロハさんが帰った後、わたしはソーセキさんを洗って、よく乾く場所に置きました。
 「ソーセキさんは、今までどんな方と一緒にいたんですか?」
 修復した跡も、いくつかあり、きっと大切にされてきたのでしょう。
 「わたしのところに来てくれたのは嬉しいんですが、実はわたし、あと10日もここにいないので、すぐにお別れになってしまいます」
 この夏が終ったら、わたしは、かえらなければなりません。
 そしてその時までを楽しむために、ハイリさんとシズクが、いろんなことをしてくれています。
 「ソーセキさん。元の持ち主の方とはお別れになってしまいましたが、きっとこの先も、いい方と巡り合えるはずです」
 わたしも……そうでした。
 「ちょっとだけ、お話しさせてください」
 ソーセキさんに、わたしは話しかけます。


 わたしには、特に大好きな人が三人います。
 わたしの大事な人たちで、わたしを大事にしてくれた人たちです。


 一人目は、一番長く一緒にいた人です。
 最初に出会った時、その子は赤ちゃんでした。
 わたしと同じくらいの大きさで「むぎゅ~むぎゅ~」と言いながら、わたしをギュッとしてくれました。
 その子の名前は、ツムギちゃんといいました。


 ツムギちゃんが、わたしよりもずいぶん大きくなった頃、家族と一緒にお引っ越しをすることになりました。
 置いていかれるかと思ったのですが、ツムギちゃんはわたしを連れていってくれて、何日も何日も船に乗って、この島にやってきました。
 新しいお家についても、ツムギちゃんはわたしを連れて、いろんなところに連れて行ってくれました。
 でも、お友達ができないようで、いつもわたしにばかり話しかけていました。
 「お友達作りなら、わたしにおまかせください!」
 そう言いたかったのですが、声も出せませんし動けません。
 とても残念です……。


 しばらくして、わたしに興味津々な方が現れ、それがきっかけでツムギちゃんとお友達になりました。
 カトーさんという方で、わたしもかわいがってもらいました。


 それからまたしばらくして、ツムギちゃんは灯台守の方と仲良くなりました。
 灯台に行くときは、いつも鼻歌を歌っていました。
 海の向こうのお家にいた時に、よく歌っていたもので、ツムギちゃんが笑顔の時に歌うものです。
 灯台に着くと、灯台守さんは「鼻歌が聞こえたから、キミが来るってわかったよ」と笑っていました。
 それから、灯台守さんもその歌を歌うようになりました。
 ツムギちゃんは「鼻歌のおかげで、あなたがどこにいるかよくわかります」と、照れたように言っていました。
 二人は……恋をしました。


 それから……ツムギちゃんは、家族の方には内緒で引っ越しの準備をしていました。
 「ツムギちゃん。今度はどこに行くんですか? 今度はお友達、すぐにできるといいですね」
 もちろん、わたしの声は届いていません。
 でも……。
 「……ゴメンね。今回は連れていくことができないの」
 そう言ってわたしを抱きしめてくれました。
 言葉が通じたのかと思いました。
 でも、そうではないことはすぐにわかりました……。


 ツムギちゃんは、みんなに内緒で灯台守さんと島を出ていくようです。
 あまり荷物は持っていけないようで、わたしは残されることになりました。
 「ツムギちゃん、お任せください! 留守はわたしが守りますから!」
 動かない口で、出ない声でそう言います。
 けれどツムギちゃんは
 「ごめんね……ごめんね……」
 そう謝るばかりでした。


 「ツムギちゃんは、わかってません! あなたがわたしを、どれだけ大切にしてくれたか!」
 たくさんたくさんギュっとしてもらって、一緒に寝て、ご飯の時も隣に座らせてくれて……。
 海に落ちてしまった時は、着物のまま飛び込んでくれて、一緒に溺れました。
 いろんなお洋服を作ってくれて、ケガをしたらすぐに直してくれました。
 「わたしはあなたから、一生分の幸せを貰ってるんです。だからツムギちゃんも、幸せになってください……」
 笑顔を作ることもできず、ツムギちゃんは悲しそうな顔のまま、この家を後にしました。
 最後に……ツムギちゃんの笑った顔が見たかったです。
 やはりわたしの声は、届かなかったんです。


 それから、いろんな人がツムギちゃんを探しに来ました。
 一緒に行くはずの灯台守さんも探しに来ました。
 「あなたと一緒に行くはずなのに、どうしてあなたが探しに来るんですか?」
 そう言っても、答えは返ってきません。


 それから『せんそー』というものが起こり、灯台守さんは出かけたまま、帰ってこなくなりました。
 ツムギちゃんのお話も……出なくなりました。
 このお家から……誰もいなくなってしまいました。


 何度も夜が来て、何度も朝が来て……わたしやお友達、ツムギちゃんの持ち物に、ホコリが積もり始めました。
 お家の前を通る人も「ここは誰の家だっけ?」と、もうツムギちゃんのことを忘れているようでした。
 あんなに頑張ってお友達を作ったのに……ツムギちゃん、かわいそうです。
 わたしはお願いをしました。すごくすごくがんばりました。
 ツムギちゃんがお友達から忘れられないように、わたしが代わりをしたいと……。


 するとある日、わたしは自由に動けるようになりました。
 しくみは……なぞです。
 これなら、ツムギちゃんを探しに行けると、わたしは歩きだしました。
 「むぎゅっ!?」
 三歩くらい歩いたら……いました。
 わたしは抱き付こうと、ツムギちゃんに向けて走ります。


 ――バンッ!
 「むぎゅ~……」
 鏡でした。
 どうやらわたしは、ツムギちゃんの姿になったようでした。
 しくみは……やっぱりなぞです。
 でもこの姿でみなさんの前に出ていけば、ツムギちゃんの代わりをすることができます。
 その前に……。





 「……ツムギちゃーん! わたしですよー! ツムギちゃーん! むぎゅ~~~っ!!」
 わたしは灯台に来ました。
 ひょっとしたらツムギちゃんがいるかと思って――。
 「ふふふんふ~ふふふふふ~ん♪」
 鼻歌を歌いました。ツムギちゃんや灯台守さんに、この歌が聞こえれば、きっとここに来てくれるはずです。
 けれど、お二人は来ませんでした。


 その後、わたしは漁港や学校に行ってみました。
 ツムギちゃんのことを、みなさんが忘れないように。
 けれど……お化けと言われて、怖がられてしまいました。
 やはりツムギちゃんは、ツムギちゃんじゃないとダメなようです


 それからわたしは、灯台で鼻歌を歌って、時々みなさんの前に出て行って過ごしました。
 「つむぎちゃんでーす! つむぎちゃんを忘れないでくださーい! つむぎちゃんをよろしくお願いしまーす!」
 そう言って出ていくと、時々カトーさんなんかに追いかけられもしました。
 そんな時わたしは、茂みや駄菓子屋さんのおもちゃコーナーに飛び込み、元の姿にかえってやり過ごしました。


 何度も夏が来て、何度も冬が来て……ツムギちゃんのお友達の方々は、旅立たれて行かれました。
 そして、ツムギちゃんを知っている最後の方。カトーさんも旅立たれました。
 その日……わたしは夢を見ました。
 たくさんの蝶の飛ぶお花畑に、灯台があり……そこの窓から、灯台を上がるツムギちゃんの姿が見えました。
 何度も上ったり下りたりしています。降りる姿も見え、登る姿が何度も見えます。
 どうやら、灯台の頂上にも辿り着かず、でも下にも降りられないようです。
 わたしは、元の姿にかえっていて、手を振ることもできませんでした。
 そしてなんとなくわかりました。役目を終えたわたしは、ここで過ごすことになるのだろう……と。
 次の夏が終るころに、わたしはこの姿になって、ここで過ごすのだろうと……。
 しくみはなぞですが……でも、そんな気がしました。


 そうしてわたしは、この夏を楽しむことに決めました。
 カトーさんの言っていた通り、やりたいことをやってみることにしました。
 そして……シズクという大好きな友達ができました。
 ハイリさんという、大好きな……恋人ができました。


 「これが、一人目のお話です」
 ソーセキさんが少しずつ乾いてきました。
 でも、まだまだ湿っているので、もう少しここにいた方がいいでしょう。
 すると――ガラガラガラガラと、スーツケースの音が聞こえてきました。
 「やっほーツムツムー」
 「カモメさん。どもです」
 「おお! 隣にかわいい子がいるねー。名前は何ていうの?」
 「ウルトラ・ソーセキ・ナンバーナイン・ドラウニングさんです」
 「よろしくね、ドラちゃん」
 「カモメさんは、灯台に何か用事があったんですか?」
 「うん、ちょっと計測しに来たんだよ」
 「むぎゅ? 何をですか?」
 「えーっとね、ここからパリングルスを並べていくと、どのくらいまであったらキレイだと思う?」
 「そですね……あの辺りまであると、すごくキレイじゃないでしょうか?」
 「うんうんそうだよね。私もそう思うよ」
 これはいったい、どういう質問なんでしょう?
 「やっぱり、5000本あれば、普通に足りそうかな」
 「むぎゅ!? パリングルス……5000本もあるんですか!」
 「ううん、ないよ」
 「ないんですか……」
 「でも、それよりすごいものがあるから、楽しみにしててよ」
 「わかりました」
 「私はもう戻るけど、羽依里とズクズクによろしく言っておいてね」

 そう言ってカモメさんは、スーツケースを引いて帰っていきました。
 カモメさんの言っていたズクズク……それがわたしの大切な人、二人目。
 わたしの親友……シズクです。
 それはほんの数日前のことです。


 わたしは、ハイリさんとシズクと約束をして、島の外に遊びに行くことにしました。
 けれど当日……わたしは、元の姿にかえってしまいました。
 数日前から兆候はありましたが、なにもこんな日に……と、泣いてしまいそうでした。
 でもその時は……元の姿なので泣くこともできません。


 そんなことが、何度か続いて……わたしは、二人の前で元の姿にかえってしまいました。
 大きな段差のある所から、茂みの中に落ちてしまい、二人は気が付かないままわたしを探しに行きました。
 すぐに戻れるって思っていたのですが、なかなか戻らないまま、夜を迎えました。
 アオさん、イナリさん、ノムラさん、ミタニさんやカノーさんも、わたしを探しているようです。
 でも、見つかりませんでした。
 「わたしのことは心配ありません! ごめーわくかけてすみません!」
 何度も言おうとしましたが、誰にも届きません……。


 それから何度も、わたしの前をみなさんが通り過ぎていきます。
 わたしはそれを、見ていることしかできませんでした。
 そんなことが何度も続いた時でした。


 「紬……羽依里君……」
 夜中……シズクが目に涙を浮かべ……虚ろな表情で歩いていました。
 「シズク……こんな夜中に何してるんですか? わたしのことはいいですから、危ないですよ?」
 シズクはそのまま、真っ直ぐこちらへと歩いてきます。
 「危ないです! この先は大きな段差になってます、落ちちゃいますから!」
 「ふたりとも……どこに……」
 声は届かず、シズクは――
 「キャッ!?」
 段差から……落ちてしまいました。
 でも……。
 「……? いたく……ない?」
 わたしがクッションになって、静久にはケガがなかったようです。
 「シズク……よかったです」
 「……この子のおかげで、助かったのね……」
 そう言って、シズクはわたしを真っ直ぐに見つめました。
 「あら? ……あなた、紬と初めて会った時に灯台にいた……ううん」
 ……。
 「それもそうなんだけど、あの写真の、紬そっくりの女の子が持っていた……子よね?」
 ……シズクは、困ったような……でも、すがるような表情でわたしを見て、こう言いました。
 「ねえ、バカなこと聞いていい?」
 ……。
 「あなた――つむぎなの?」


 「そう……です」
 いつの間にか、声が出るようになっていました。
 「ずっと……ここにいたの?」
 「……はい、ここにいました」
 「さっきまでの姿が、あなたの……本当の姿なの?」
 「……そです」
 こんなこと、普通は信じられません。
 そんなわたしを、シズクは……。
 「紬……。ごめんね……気が付いてあげられなくて」
 「え……?」
 ギュっとしてくれました。
 「シズク?」
 「こんなところで……ひとりで……寂しかったでしょ? ゴメンね……見つけてあげられなくて、あなたの本当の姿に……気づいてあげられなくて……」
 「な、何でシズクが謝るんですかぁ……」
 「だって、この夏……ずっと一緒にいた親友の悩みに……気付いてあげられなかったんだもの」
 「そんなの……気付かないであたりまえですよ。シズクは……やさしすぎです……。こんなわたしを、普通に受け入れてくれて……」
 「だ、だって……頑張って……包容力のある感じとか……お姉さんっぽい感じとか……見せないと、な、泣いちゃいそうなんだもの……」
 シズクの目に、涙が溜まってきています。
 「ほんとうは、すごいびっくりしてるし……。信じられない部分もあるし……いろいろ聞きたいことあるけど……ふぐっ」
 「いいですよ……全部きいてくれて……」
 「でもそれ聞いたら紬がきずつくかもしれないからぁ……ひっく……。むりして、ぜんぶ受け入れる態度して……おかないとぉ」
 「む、無理しないでください」
 「ふぐっ……ひっ……で、でもぉ……。なみだとまらないたいぷだからぁ……かっこいいこといわないとぉ……このだんさのぼれないくらいないちゃうからぁ」
 目から涙がポロポロ零れ始めました。
 「あの……今まですみません。わたしの正体……お二人に黙っていたこと……」
 「そんなの、どうでもいいわよぉ。紬が帰ってきてくれたことの方が――ひっく! しょ、正体とかよりも重要なのぉ」
 「シズク……」
 「か、帰ってきてくれてよかったぁ……。また会えてうれしい……」
 「わたしも……わたしもうれしいです……シズク」





 わたしたちは、ギュッと抱き合いました。
 ……ツムギちゃんには、ギュッとしてもらいましたが、わたしの方からギュっとしたのは、シズクが初めてです。
 わたしの、すごく大切な親友です。
 「シズク……。シズクには全部聞いてもらいたいんです。わたしの正体と、ツムギちゃんのお話を……」
 「あ……ごめんね紬。実は今、そんな場合じゃないの」
 「むぎゅ!?」
 わたしとしては、すごく重要なお話だったのですが……。
 「羽依里くんがね……あなたみたいに行方不明になってるの」
 「ハイリさんがですか!?」
 「ええ。フェリーに乗ったところを見た人はいないから、島のどこかにはいるはずよ」
 「は、早く探しましょう!」
 「ううん……今は、みんなが探してくれてるから、灯台で待ちましょう?」
 「わ、わかりました」


 それから、わたしとシズクは灯台でハイリさんを待ちました。
 そして、シズクに昔の話を、少し聞いてもらいました。
 どうやら、ツムギちゃんの日記を読んでいたらしく、この灯台のことや、灯台守さんのお話も知っていました。
 「じゃあ……紬は、そのツムギちゃんや、灯台守さんが、ここを見つけられるように、あの鼻歌を歌ってたのね」
 「はい……この鼻歌が聞こえれば、いる場所がわかると、お二人とも言っていたので」
 「そう……」
 そう言うと、シズクはわたしをまたギューッとしてくれました。
 「羽依里くん、きっとすぐに見つかるわ」
 「……心配です」
 「大丈夫よ。夏休みはずっと紬と一緒にいるって、約束したでしょう? 紬がここにいるなら、きっとここに来る」
 「だといいのですが……」
 「羽依里くんは約束を守る人よ? お出かけの約束を急に破った紬と違ってね♪」
 「むぎゅ! そ、その件は……すみません」
 「本当よー。でも、約束を破ったついでに、夏が終わったらかえるっていう約束も……破っちゃいましょう?」
 シズクは……優しく笑いながら……でもちょっとだけ、本気の顔をしてました。
 「……そですね」
 それはきっと無理ですけれど、わたしはそう返事をしました。
 「嬉しい♪ じゃあ、いつもの鼻歌を歌っちゃいましょうか?」
 「はい、そうしましょうか」
 「あ、それに鼻歌を歌えば、紬がここにいるって、羽依里くんもわかってくれるかもしれないわよ。ツムギちゃんたち二人みたいに」
 「おー、そですね!」
 「でも、紬がここにいるって、羽依里くんに伝えるなら……」
 シズクは、鼻歌の最初の部分を歌った後……。
 「むーむぎゅぎゅぎゅぎゅ~♪ むーむぎゅぎゅぎゅぎゅ♪ むぎゅぎゅむぎゅぎゅぎゅ~♪ ……なんてどうかしら?」
 「な、なんですかその歌詞は? なんかすごい恥ずかしいです」
 「だって、普通の鼻歌だったら、ツムギちゃんと灯台守さんのものでしょ? 紬がここにるって知らせるなら、この方がらしいでしょ?」
 「むぎゅ~……そ、そうかもしれませんが」
 「じゃあ『わたしはここにいます』って意味を込めて、むぎゅむぎゅって歌いましょうか?」
 わたしは目を閉じて、シズクにギュっとされたまま歌います……。
 シズクもそれに合わせて歌い出しました。


 ――わたしはここにいます――
 ――シズクもここにいます――
 ――ハイリさんもここにいます――


 そんな願いを込めて、歌いました。


 そして目を開けると……。
 「え?」
 「……ハイリ……さん?」
 いつの間にかわたしたちの前に、ハイリさんが横たわっていました。

 「不思議なこともあるものですね? そう思いませんか、ソーセキさん」
 ソーセキさんは、ずいぶんと乾いてきていて、そろそろ中に入れてもいい感じになってきました。
 すると「うぅぅぅ~~~……」と、唸り声が聞こえました。

 「つ、つむぎぃ……ちょっと、手伝ってぇ!」
 「むぎゅ!? アオさんですか! 今いきます!」
 アオさんは大きな荷物を抱えていて、それを運ぶのを手伝い、一緒に灯台の中に入りました。
 「はぁ……重かった……」
 「お疲れ様です……中身は何ですか?」
 「うん、今日から羽依里、ここに寝泊まりするんでしょ? 駄菓子屋でそのための道具を注文してたから、配達に来たの」
 「なるほど、それはありがとうございます」
 「ううん。っていうか、この重さ……あいつなに頼んだんだろ?」
 「開けてみましょうか?」
 二人で、荷物を開けてみます。すると。
 「お布団ですね」
 「あれ? でも……ひ、一組しかないわよ!?」
 「はい、そうですね」
 お布団は、わたしがここにとまる時用に、ここにもう一組あるので、問題ありません。
 「一組ってことは……一組ってことよね? 二つは入ってないわよね? じゃあえっと……」
 「一組あれば、ぜんぜん問題ありませんよ」
 「問題ない!? あ、そ、そうよね……二人は恋人だし……確かに問題ないわよね。むしろそういうことしない方が不自然だもんね」
 「アオさん?」
 「で、でもそうかー……紬はもう……。なんかショックだなー」
 何だか、ものすごく落ち込んでいるようです。
 「ち、ちなみにいままで……何回くらい、そういうことがあったの?」
 お泊りしたのは……。
 「二回です」
 「そ、そっか……」
 「一回目は、シズクも一緒で、二回目はカトーさんのお家にでした」
 「ちょっと待って……一回目がおかしくない!?」
 「そのあと、わたしとシズクの二人だけの時もありました」
 「なんかすごいこと言い出した!」
 「今度、アオさんもいかがですか?」
 「わーーーーーーーーーー! なんかすごいことに誘われてる!!」
 アオさんは、顔を真っ赤にしています。
 「お、思い出作ってあげたいし……紬がどうしてもっていうなら……」
 「むぎゅ! ぜひお願いしたいです!」
 「そんなあっさり!?」


 「じゃ、じゃあ……また今度ね」
 「はーい」
 アオさんは顔を真っ赤にしたまま、小走りで帰っていきました。
 そして、それと入れ替わりで入ってきたのが――
 「なんか今、蒼がすごい顔して出て行ったけど……」
 ――大切な人、三人目のハイリさん……わたしの恋人です。


 ハイリさんは今、夏が終わったら帰ってしまうわたしのために、一生分のイベントを用意してくれて、そしてしばらくここに住んでくれます。
 「あ、ハイリさん。こちらは新しいお友達のウルトラ・ソーセキ・ナンバーナイン・ドラウニングさんです」
 「それ、名前つけたのノミキか?」
 「いえ、シロハさんです」
 「え!? そうなのか?」
 意外そうな表情を見せています
。  「えっと、よろしくな?」
 ソーセキさんの手を握って、握手をしています。
 どうですか? 大事にしてくれそうな人でしょう?
 あなたにもきっと、大事な人、大事にしてくれる人……そんな人がまた現れます。


 わたしたちはこの夏、ハイリさんとシズクと……そして島の人たちと、この夏の思い出を共有しました。
 まだまだ時間はたくさんあると思ったのに、やりたいことを並べてみれば、全然時間は足らなくて。
 短いと思われた時間の中を過ごしたえけれ、振り返ればたくさんの思い出がありました。
 ……。
 あと少ししかありませんが、ハイリさんはここに寝泊まりをするので、まだまだ色んなことがあると思います。


 「えっと、じゃあ紬……今日からここに住むけど、よろしくお願いします」
 「お願いします」
 こうしてわたしたちは、残された短い時間の中、一緒に暮らすことになりました。


 ある日のお昼のことです。
 「なあ紬、表札作らないか?」
 「おー、それはいいですね。入口のところに作りましょう」
 「いい感じのいたとかないか?」
 「無いですね。素材になるものは、パリングルスの空き容器しかありません」
 「素材の偏りがひどいな。パリングルスは、イラストとかが派手だし、ちょっと向かないかな」
 「では、直接書いちゃいましょうか?」
 わたしは灯台の入り口に、自分の名前とハイリさんの名前を書きました。
 「……なんか、観光地で悪ノリして、迷惑かけてるカップルっぽくないか?」
 「確かに、そですね……」
 「真面目一本でやってきた紬さんがこれやちゃダメだろ?」
 「あとで消しておきます。あ、ではこちらに書くのはいかがでしょう?」
 「パリングルスのふたか? いいんじゃないか?」
 ペンとふたを手渡すと、ハイリさんは『鷹原羽依里』と書きました。
 わたしはそれを受け取って、その下に自分の名前を書きます。
 「では、紬……ヴェン――」
 ……文字が入りきりません。
 そういうことであれば。
 「ん、書き終わったか?」
 「は、はい……」
 わたしはそれを、ハイリさんに見せます。
 「……つ、紬さん。大胆ですね」
 「も、文字が……入りきらなかったんです!」
 なので仕方なく『鷹原紬』と、ふたに書きました。


 ある日の朝のお話です。
 「ハイリさん、そういえばここにお泊りしている時、ひげは剃らないんですか?」
 「俺は薄い方だし、あんまり生えてこないんだ」
 「……ヒゲの生えたハイリさん、ちょっと見てみたいです」
 「そんなすぐ生えないよ」
 「マジックで描いてみるとかどうですか?」
 「いいけど、その代わり紬もやるんだぞ?」
 「はい、全然いいですよ」
 「え? いいの?」
 ということで、わたしはハイリさんにひげを書いてみました。
 「……パリングルスのおじさんみたいなヒゲだ」
 「ハイリさん、かっこいいです……」
 「え? ほ、ホントに?」
 「モテモテになってしまうヒゲです」
 「そ、そっか……。あ、約束通り紬にも描くか」
 「お願いします」
 ハイリさんは、わたしの顔にペンを走らせます。これはやはり、パリングルスのおじさんヒゲ……。
 「予想外だ。……案外似合うな、紬にこのヒゲ」
 「ホントですか? 鏡を見たいです」
 近くにある鏡で、自分の顔を見てみます。
 「……ハニーマスタード味って感じでしょうか?」
 「そうだな。さしずめ俺は……バッファローウィング味か?」
 「そですね。似合っています」
 ――コンコン
 『紬ー、羽依里くーん、おはよう』
 外からシズクの声が聞こえました。
 「ビーフ味がきたな」
 「ぜひ仲間に入ってもらいましょう!」


 ある日の夜に、こんなこともしました。
 「ハイリさーん。起きてますかー?」
 「……すー……すー……ん?」
 寝ているようです。
 「……起きないでくださいね?」
 わたしは音をたてないように、四つん這いでハイリさんに近づきます。そして……。





 「ん……ちゅ」
 キスをしました。
 起きている時は恥ずかしくて、キスをしてほしいなんて言えません。
 だからといって、ハイリさんの方から聞いてくることもありません。
 なので寝ている間に……ちょっとだけ。
 「はぷ……ちゅ」
 むぎゅ~……や、やっぱり照れます。
 「あの……紬?」
 「むぎゅ~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
 「え、えっと……今のって」
 「今のは――――キスですっ!」
 「なんのごまかしもしないのか!?」
 「しませんっ!」
 「何で急にこんなことを!?」
 「したかったからですっ!」
 「したかったからって……」
 ハイリさんは顔が真っ赤になっていました。きっとわたしも同じです。
 「えっと、言ってくれればよかったのに」
 「すごい恥ずかしいですし……すごい照れますし……」
 そう言うと、ハイリさんは起き上がって、こっちを見ました。
 「やりたいこと、全部やるんだからさ……紬のしたいことは全部言ってほしい。恥ずかしいかも知れないけどさ」
 「むぎゅ……そ、そですね。そういう約束ですもんね」
 わたしは、ハイリさんの目を見て言います。
 「ぎゅーってされて、キス……されたいです」
 「うん……わかった」
 ハイリさんが、ゆっくりとこちらに近づいてきます。
 わたしたちは、潰れてしまうのではないかという程に、お互いをギュッとして……唇を重ねました。


 次の日の朝、恥ずかしくて、お互いの顔が見られませんでした。
 でもきっと、明日も明後日も、こういうことをしていくのだと思います。
 残された時間は短いですけど、その分……濃厚に。
 ……キスの濃厚さの話じゃないですよ? 時間を濃密にというお話です。


 ――ボーーーーーー!
 遠くの方で、フェリーが到着する汽笛の音が聞こえました。
 「あ、紬。今日のイベントは、静久の荷物が多いからさ、ちょっと迎えに行ってくるよ」
 「はい、いってらっしゃいませー」
 ハイリさんが灯台を出て、船着き場へと向かっていきました。
 わたしは、二人が来るのが見たくて、灯台の上の方に登ります。
 今日はどんなことが起こるのでしょう?
 楽しみで楽しみで、自然と歌を口ずさんでいました……。
 「むーむぎゅぎゅぎゅぎゅ~♪ むーむぎゅぎゅぎゅぎゅ♪ むぎゅぎゅむぎゅぎゅぎゅ~……♪」


 ――わたしはここにいます――
 ――シズクもここにいます――
 ――ハイリさんもここにいます――


 ――いつまでも。
 そんな願いを込めて、わたしは歌いました。

【紬-文德斯篇】
<自己看重的人、看重自己的人>


 八月的后一半了……。
 夏天,也快要结束了。
 我一个人呆在灯塔。
 「你好……棉花糖妹妹」
 「白羽! 你好啊」
 「你好……那两位呢?」
 「现在出去了。说是为了给我准备70年份的活动。」
 「这样啊。那个……我也,稍微,参加了一点」
 「姆Q! 太谢谢了!」
 「嗯」
 白羽一边说着,一边低下头,把手里提着的袋子递向了我。
 「这是什么东西啊?」
 「这个是,空的品客壳子」
 「哦……太感谢了」
 「好像,不是很开心?」
 「那倒没有……只是,最近已经不怎么在做观景台了」
 「这样啊……」
 「不过,既然白羽都拿过来了,那我就必须要再次开始做了……我会努力的!」
 「加油」
 然后,她还从袋子里拿出了什么。
 「那个是……?」
 「猫咪的玩偶……从海里钓上来的」
 「海里居然也有这样的东西啊」
 「海里也有这样的东西呢」
 接着,她把玩偶伸向了我。
 「因为棉花糖妹妹好像也在收集玩偶吧,所以这也算是顺便……」
 「太谢谢了! 那么,就给它起名字吧! 它的名字就是……」
 「……名字是」
 「创世纪!」
 「很配呢」
 「对啊」
 「不过,像是那些……ultra啊,duel fang啊、drowning mark Ⅷ啊,加上那些的话应该挺帅气的」
 「哦,感觉确实很帅呢。特别是drowning的部分,仿佛就是他生存的方式……」
 「你明白的吗?」
 「懂的! 那么,再稍微想想,给个更帅气的名字」


 「那么,棉花糖妹妹,这样:Ultra・创世纪・N0.09・Drowning……回见」
 「嗯! 我会好好照顾Ultra・创世纪・N0.09・Drowning的」
 在白羽回去之后,我好好洗了一下创世纪,把它放在我经常晾晒玩偶的地方了。
 「创世纪啊,你以前都和谁一起的啊?」
 因为它身上有不少被修复的痕迹,看得出来以前是很受疼爱的。
 「虽然我很高兴你能来我身边,不过再过10天我就要离开这里了,马上就要分开了」
 在这个夏天结束之后,我就不能不回去了。
 正是为了享受那之前的时光,我才和羽依里以及静久在这做各种各样的事情。
 「创世纪啊,虽然你已经和原先的主人分开了,不过,肯定还会遇到好人的」
 因为我……也是这样的。
 「稍微,听我说说话吧」
 我开始对着创世纪,讲起了我自己的故事。


 我最喜欢的,一共有三个人。
 既是我所珍重的人,也是能够珍重我的人。


 第一个人,是和我待在一起最久的人。
 第一次相遇的时候,她还是个嗷嗷待哺的婴儿。
 她当时和我差不多大,一边“姆Q~姆Q~”地叫着,一边一把抱住了我。
 她的名字,叫小紬。


 在小紬长到比我大很多的时候,她们家里决定搬家了。
 本来都觉得我自己会被丢下了,不过小紬还是带上了我,坐了很久很久的船,来到这个岛上。
 哪怕是到了新家,小紬也一直带着我,去了许多地方。
 不过,因为她一直交不到朋友,所以总是和我说话。
 「交朋友的话,就交给我吧!」
 我虽然很想这么说,可是完全发不出声音。
 真的太遗憾了……。


 过了一段时间,很多人开始对我感兴趣,然后也成为了小紬的朋友。
 有个叫加藤的人,也很疼爱我。


 又过了一段时间,小紬和灯塔看守变得要好了。
 每次去灯塔,她都会哼着歌。
 那首歌,在老家的时候,她也会经常哼着,所以她每次都会笑着哼着那首歌。
 每当她走到灯塔,看守就会说“因为听到了歌声,所以我知道你来了”。
 之后,看守也逐渐开始哼起那首歌了。
 小紬也害羞着说道到,“因为歌声,我也知道你在哪里了”。
 她与他……相恋了。


 之后不久……小紬开始背着家里人准备搬家了。
 「小紬,这次要去哪里啊? 这次如果能马上交到朋友就好了呢」
 自然,我的声音传达不过去。
 可是……
 「……抱歉,这次不能带上你了」
 一边这么说着,一边抱住了我。
 我以为她听到我说的话了。
 然而,过不了多久,我就知道不是这样子 ……。


 小紬似乎要背着大家和灯塔看守离开这里。
 因为不能带太多东西,所以我就被留下了。
 「小紬,放心,看家就交给我吧!」
 我用着不能动的嘴,说出了这没有声音的话。
 可是小紬她
 「对不起……对不起……」
 一直在道歉。


 「小紬,你根本就没明白! 你究竟多么疼爱着我!」
 我被她抱了那么多次,我们一起吃饭,一起睡觉……。
 哪怕我掉进了海里,你也直接穿着衣服跳进来,结果自己也差点溺水了。
 你给我做了那么多洋服,也帮我缝合了那么多的伤口。
 「我已经从你那里获得了一生的幸福了,所以,请小紬也变得幸福吧……」
 可是,小紬连笑脸都没有了,她带着那悲伤的面孔,离开了这个家。
 我最后……还是想见见小紬的笑脸。
 果然,我的声音,还是传达不到她那里。


 在那之后,许许多多的人来到这里寻找小紬。
 本应和她同行的灯塔看守也来了。
 「明明你应该和她一起的,可是为什么你也来找了呢?」
 我就算这么说,也不可能有回答的。


 后来,好像什么‘战争’爆发了,看守也出去了,最后他也没有回来。
 再也没有人……说到小紬了。
 再也没有人……来到这个家里了。


 不知多少个日夜过去……我和小紬的朋友们,还有她的东西,都开始积灰了。
 连走过门前的人也说“这里是谁的家来着”,看来已经忘掉小紬了。
 明明她那么努力地去交朋友……小紬真的太可怜了。
 我许了个愿望,非常非常地认真。
 为了不让小紬被朋友们以往,让我来代替她……。


 然后,有一天,我变得可以自由活动了。
 原理……是个谜。
 这样的话,我就能去寻找小紬了,我迈出了步子。
 「姆Q!?」
 走了不到三步……我看到她了。
 我仿佛是要拥抱她一样,飞奔了过去。


 ――梆!!!
 「姆Q~……」
 那是一面镜子。
 看来,我是变成了小紬的样子。
 原理……果然还是个迷。
 不过,如果是这个样子的话,我就能够代替小紬了。
 在这之前……。





 「……小紬,是我哦! 小紬! 姆Q~~~!!」
 我来到了灯塔。
 毕竟小紬可能就在那里――。
 「哼哼哼哼~哼哼哼哼哼~♪」
 我哼起了歌。如果小紬和灯塔看守听到了的话,肯定会来到这里的。
 可是,他们还是没有来。


 在那之后,我来到了渔港和学校。
 为了不让大家忘记小紬。
 不过……我似乎吓到别人,还被当成怪物了。
 看来,小紬必须得是小紬本人才行啊。


 从此,我就待在了灯塔,哼着那首歌,时不时跑到大家面前去。
 「我是小紬————! 请不要忘记小紬————! 请多多指教了————!」
 每当这么说着,就会被那个叫加藤的追着跑。
 每当这种时候,我就跳进灌木丛或者粗点心店的玩具区,变回原本的样子。


 夏去冬来……小紬的那些朋友们,都纷纷踏上了旅途。
 然后,最后一个知道小紬的人,加藤她也踏上旅途了。
 那一天……我做了一个梦。
 在许多蝴蝶飞舞的花田中,有一个灯塔……透过那扇窗,我能看到正在爬楼的小紬。
 我看到了她不知多少次上下楼的身影。
 看来,那个灯塔,既不能上到顶楼,也不能走下来。
 我自己则是变回了原来的样子,自然也不能挥手了。
 然后我似乎明白了一点。我的使命结束后,我就会来到这里生活了……。
 在下一个夏天结束之后,我就会以这幅模样,在这里生活……。
 原理虽然还是个迷……不过,我觉得肯定会这样的。


 所以,我决定好好享受这个夏天。
 像加藤说的那样,过自己想过的生活。
 然后……有了静久,我最喜欢的挚友。
 还有羽依里,我最喜欢的……恋人。


 「这就是第一个人的故事」
 创世纪变得稍微有点干燥了。
 不过,还是有点潮湿,所以还是再在这里放一会儿吧。
 然后,耳边想起了嘎啦嘎啦的声音,似乎是行李箱被拖行的声音。
 「呀—豁—紬紬」
 「是鸥啊,你好」
 「哦! 身边有个很可爱的孩子呢。名字叫什么呢?」
 「Ultra・创世纪・N0.09・Drowning」
 「请多指教啊,小多」
 「话说,鸥是为什么要来灯塔呢?」
 「嗯,稍微来算点东西」
 「姆Q? 算什么啊?」
 「那个啊,从这里开始摆品客的话,大概摆到哪里,才会感觉很漂亮呢?」
 「那个的话……大概摆到那里吧?」
 「是呢,我也这么觉得」
 这究竟是怎么一回事啊?
 「果然,有个5000管,怎么样都够啊」
 「姆Q!? 品客……居然有5000个吗!」
 「不啊,没有哦」
 「没有啊……」
 「不过,有比那个更厉害的东西,所以请耐心等吧」
 「我明白了」
 「我先回去了,不过代我向羽依里和静静问个好啊」

 鸥一边说,一边拉着行李箱回去了。
 鸥所说的静静……也是我第二个我最珍重的人。
 我的挚友……静久。
 那仅仅是几天前的事情。


 我和羽依里以及静久约好了,要去岛外玩。
 可是当天…我变回了我原来的样子。
 其实几天前就有这个预兆了,可是为什么是这天……我真的很想哭。
 然而那时的我……因为是原来的样子,所以哭不出来。


 那样的事情,又发生了好几次……我竟然在他们的面前变回了原来的样子。
 我从高处掉进了灌木丛里,所以他们谁都没有发现,就直接去找我了。
 我明明觉得能很快变回来,可是,却没有变回来,一直到夜里。
 苍、稻荷、野村、三谷和加纳,都开始找我了。
 可是,谁都没有发现我。
 「我没事的! 麻烦了大家真的对不起!」
 不知多少次想说出这句话,可是却说不出口……。


 不知多少次,大家从我身前走过。
 我却只能默默看着。
 不知道多少次了。


 「紬……羽依里……」
 夜里……静久双眼含泪……一脸迷茫地走了过来。
 「静久……大晚上的,在做什么呢? 我没事的,这里很危险哦?」
 静久径直地走了过来。
 「很危险的! 前面太高了,会掉下来的!」
 「你们俩……在哪里……」
 声音也过不去,静久她――
 「呀!?」
 从上面……掉了下来。
  不过……。
 「……? 好像……不痛啊?」
 我正好充当了垫背,所以静久好像没有受伤。
 「静久……太好了」
 「……看来是多亏了这孩子呢……」
 这么说着,静久直直地看向了我。
 「嗯? ……你,是我和紬相见的那天的那个……不对」
 ……。
 「虽然确实这样,不过你应该是那张照片里,那个长的和紬一样的女孩子手里的……那个孩子吧?」
 ……静久她,似乎很困扰……不过,很快表情就变得坚定,看向了我。
 「我说,能问个看来很异想天开的事情吗?」
 ……。
 「你――是紬吗?」


 「是……的」
 不知何时,我已经能发出声音了。
 「你一直……都在这里吗?」
 「……是的,我一直都在这里」
 「刚才的模样,才是你……真正的模样吗?」
 「……是的」
 这种事情,一般人不会相信的。
 静久她,把我……。
 「紬……对不起啊……一直都没发现你」
 「嗯……?」
 抱在了怀里。
 「静久?」
 「这种事情……一个人……很寂寞吧? 对不起……一直没能找到你,一直没能发现……你真正的模样……」
 「为,为什么静久你要道歉啊……」
 「因为,这个夏天……一直在一起的挚友……我居然没能发现她的烦恼啊」
 「这种事情……发现不了才正常啊。静久你……太温柔了……居然能够接受这样的我……」
 「因,因为……我不努力……显得有包容心……像个大姐姐的话……我,我就要哭出来了啊……」
 静久的眼睛里其实已经饱含泪水了。
 「实际上,我真的吓了一跳……有好多东西都不敢相信……也想听好多东西啊……(哽咽)」
 「可以哦……全部都告诉你……」
 「不过我要听的话,紬就会伤心的啊……(哽咽)……所以我,必须做出全部接受……的样子才行啊」
 「不,不要勉强自己啊」
 「(哽咽)……(哽咽)……可,可是啊……我是一个止不住眼泪的人啊……不说点显得帅气的话的话……就会哭的连着台阶都上不去了啊」
 泪水开始从她的眼睛里不断涌出了。
 「那个……真的对不起。一直没有……告诉你们我真正的身份……」
 「那种事,怎样都好啊。紬回来了(哽咽)比真身那些重要多了」
 「静久……」
 「能,能回来真的太好了……能再看见你真的太好了……」
 「我也……我也好开心……静久」





 我们抱在了一起。
 ……虽然我以前被小紬抱过不知道多少次,不过,我自己主动去抱的,静久是第一个。
 我最重要的挚友。
 「静久……我真的想让静久听听我的故事。我的真身,和小紬的故事……」
 「啊……对不起啊紬。现在不是那个时候呢」
 「姆Q!?」
 明明我觉得这是很重要的话啊……。
 「羽依里他……和你一样失踪了」
 「羽依里也是吗!?」
 「是啊,因为没人看到他有上船,所以应该在岛上哪个地方才对」
 「那,那快点去找吧!」
 「不……现在大家都在找了,先去灯塔等着吧?」
 「我,我知道了」


 我和静久回到了灯塔等羽依里。
 然后,我和静久稍稍说了一下我的过去,和小紬的故事。
 看来,她已经看过小紬的日记了,无论是这个灯塔,还是那个看守的事情,她都知道。
 「那么……紬是为了能够被那位小紬和灯塔看守找到,才哼着那首歌吗」
 「对……因为他们也这么说过,只要听到这首歌,就能知道对方在哪里」
 「这样……」
 这么说着,静久又一把抱住了我。
 「羽依里,一定很快就能找到的」
 「……很担心他啊」
 「没问题的。他不是说好了整个夏天都和紬在一起的吗? 只要紬在这里,他一定会来的」
 「真那样就好了……」
 「羽依里可是个遵守约定的人哦? 和爽掉出门约定的紬可不一样呢♪」
 「姆Q! 那,那件事情……真的对不起」
 「真是的——不过,既然都已经爽掉了,那么,在夏天结束时回去的约定……也爽掉吧?」
 静久她……温柔地笑着……可是隐隐之间,带着一股认真。
 「……说的是呢」
 虽然明知道不可能,不过我还是顺着她这么说了。
 「真棒♪ 那么,来唱那首歌吧?」
 「好啊,来唱吧」
 「对了,如果唱那首歌的话,羽依里就知道紬在这里,说不准就来了呢。就像那两个人一样」
 「喔,确实是呢!」
 「不过,得让羽依里君知道紬在这里……」
 静久在那首歌的开头一段之后……。
 「姆—姆QQQQ~♪ 姆—姆QQQQ♪ 姆QQ姆QQQ~♪ ……这样怎么样啊?」
 「那,那歌词是什么啊? 总感觉有点害羞啊」
 「因为,如果是普通的唱法,不就是小紬和看守的东西了吗? 如果让别人知道这是紬的话,这样才会更好吧?」
 「姆Q~……确实是呢」
 「那么,加上『我就在这里』的意思,姆QQ地唱起来如何?」
 我闭上了眼睛,在静久的怀抱中唱了起来……。
 静久也跟着我唱了起来。


 ――我就在这里――
 ――静久也在这里――
 ――羽依里也在这里――


 怀着这样的愿望,静静歌唱。


 睁开眼睛……。
 「啊?」
 「……羽依里……?」
 不知何时,羽依里就倒在了我们的面前。

 「还真的是不可思议呢,你不觉得吗,创世纪?」
 创世纪也已经干了不少了,差不多也应该拿进来了。
 耳边传来了「呜呜呜呜~~~……」的呜咽声。

 「紬,紬……稍微,帮个忙!」
 「姆Q!? 是苍啊! 我马上来!」
 苍抱着很大件的行李,我和她一起搬进了灯塔。
 「哈……好重啊……」
 「辛苦了……里面是什么啊?」
 「嗯,今天羽依里那家伙不是要住在这里了吗? 所以他在粗点心店下了订单,这才送过来」
 「这样啊,真的很感谢」
 「没事的。话说回来,这么重……那人订了啥东西啊?」
 「要不打开看看吧?」
 我们打开了包装。
 「是套地铺啊」
 「嗯? 不过……只,只有一套啊!?」
 「对啊」
 地铺的话,这里还有一套我平时用的,所以完全足够了。
 「一套的话……就一套吗? 没有第二套吧? 那么就是说……」
 「有一套的话,就足够了」
 「足够了!? 啊,确,确实是呢……两位也是恋人……确实没有问题呢。不那样才有问题呢」
 「苍?」
 「不,不过是这样啊……紬已经……总感觉有点震惊」
 她的意志似乎变得有点消沉了。
 「顺便,直到现在……这种事情,有过几次了?」
 留宿的话……。
 「两次了」
 「这,这样啊……」
 「第一次的话,静久也在一起,第二次是在加藤家呢」
 「给我等一下……第一次不对劲吧!?」
 「然后,还有我和静久独处的时候」
 「好像说出了什么很厉害的东西!」
 「下次,苍也一起来怎么样啊?」
 「哇啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊! 好像被邀请进了什么不得了的东西啊!!」
 苍满脸通红。
 「我,我当然也想给紬留下回忆……如果紬你真的想的话……」
 「姆Q! 拜托了!」
 「这么干脆!?」


 「那,那么…回见」
 「好——」
 苍满脸通红地,小跑着回去了。
 然后,后脚进来的人是――
 「话说,刚才苍那是怎么了,表情好神奇啊……」
 ――第三位,我最珍重的人,羽依里……也是我的恋人。


 羽依里为了在这个夏天之后要回去的我,准备了一生份量的活动,现在就暂时住在这里。
 「啊,羽依里。这边是我的新朋友Ultra・创世纪・N0.09・Drowning」
 「那个,起名字的是野美希吗?」
 「不,是白羽」
 「啥!? 居然是她?」
 他脸上露出了很意外的表情。  
「那个,请多指教?」
 他握住了创世纪的手,算是握手了。
 怎么样? 他是个会珍重别人的人吧?
 你也一定会遇到那样的人……自己珍重的,也会珍重自己的人。


我,和羽依里、静久……还有岛上其他的人。
 虽然看起来时间还有很多,可是一旦将要做的事情列出来,时间就完全不够了。
 虽然过了一段很短的时间,可是回忆起来,就有不少的回忆。
 ……。
 虽然时间也不多了,可是羽依里既然住了过来,肯定还会有许多事情发生。


 「那么,紬……今天开始我就住在这了,请多指教」
 「请多指教」
 我们就这样,在仅剩不多的时间中,同居了。


 某天中午。
 「我说紬啊,要不做个门牌吧?」
 「喔,确实不错呢。在入口那里做一个吧」
 「有没有好点的木板啊?」
 「没有呢。能当材料的,只有品客的空罐子了」
 「你对材料的偏爱太那啥了。品客的话,插画也太张扬,不太合适呢」
 「那么,直接写上去吧?」
 我在灯塔的入口,写上了我和羽依里的名字。
 「……总感觉,我们是不是那种在景区乱涂乱画的情侣啊?」
 「确实是呢……」
 「那么对一直都这么认真的紬同学来说,这样不好吧?」
 「后面会擦掉的。那么在这里写怎么样?」
 「品客的盖子? 可以啊」
 把笔和盖子递过去,羽依里写上了『鹰原羽依里』五个大字。
 我接过了那个盖子,在那下面写上自己的名字。
 「那么,紬……wen――」
 ……写不下了。
 那样的话。
 「嗯、写完了吗?」
 「嗯,写完了……」
 我把那个盖子递给他看了。
 「……紬,紬小姐。你真的很大胆啊」
 「因,因为……写不下去了嘛!」
 因为实在是没有办法了,所以我在上面写上了『鹰原紬』三个字。


 某天早上。
 「羽依里啊,说起来,你住在这里的时候,不剃胡子的吗?」
 「我本来就不怎么长胡子呢」
 「……我还真的想看看羽依里长胡子的样子呢」
 「哪有那么快就能长出来的啊」
 「像魔术那样画出来?」
 「倒是可以,不过紬也要哦?」
 「可以啊,完全没问题」
 「啥? 可以吗?」
 总之,我就帮羽依里把胡子画上了。
 「……和品客爷爷一样的胡子啊」
 「羽依里,好帅啊……」
 「嗯? 真,真的吗?」
 「感觉能变得受欢迎般的胡子呢」
 「是,是吗……。啊,那么,我也给紬画一个」
 「拜托了」
 羽依里开始在我脸上写写画画,这果然,还是品客爷爷的胡子啊……。
 「真的意外……这胡子真的意外地适合紬啊」
 「真的吧? 我想照照镜子」
 我就着身边的镜子照了照脸。
 「……感觉像是蜂蜜芥末口味的啊?」
 「确实呢。那我也不过是……布法罗辣鸡翅味的?」
 「确实呢,很合适啊」
 ――咚咚
 『紬ー、羽依里—、早啊』
 门外传来了静久的声音。
 「这是牛肉味的吧」
 「那就让她加入我们吧!」


 某天晚上,也有这么件事。
 「羽依里——醒着吗?」
 「……呼……呼……嗯?」
 看来是睡着了。
 「……不要醒过来哦?」
 我将四肢着地,尽量不发出声音地凑过去。然后……。





 「嗯……啾」
 亲了上去。
 醒着的时候因为太害羞了,说不出想要亲吻这种话。
 虽然这么说,可是羽依里也没说过想要。
 所以,我就想在睡觉的时候……稍微来一下。
 「哈……啾」
 姆Q~……果,果然太害羞了。
 「那个……紬?」
 「姆Q~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
 「那,那个……刚才是」
 「刚才的——是亲吻!」
 「完全不掩饰的吗!?」
 「不掩饰!」
 「为啥突然要做!?」
 「因为想要啊!」
 「因为想要……」
 羽依里满脸通红,我肯定也是一样的。
 「那个,你说不就好了」
 「很羞耻啊……很害羞的……」
 羽依里想了想,直起身来,径直看向了我。
 「想做的事情,就做完吧……紬想做的事情,我会全部帮你实现的,虽然里面可能会掺杂不少让人感到害羞的东西」
 「姆Q……确,确实呢。当初是这么约定的」
 我径直看向了羽依里的双眸。
 「我想,被你拥抱,被你……亲吻」
 「嗯……我明白了」
 羽依里默默地靠了过来。
 我们虽然没有抱得太紧,但还是紧紧相拥,然后,相吻。


 第二天早上,我们都因为太过于害羞,所以甚至没有打照面。
 不过,无论是明天,还是后天,我们肯定都会这样。
 虽然剩下的时间很有限,不过,我们……会把它变得更浓厚的。
 ……我不是说亲吻的事情啊? 我是说想把这段时间变得更加浓厚。


 ――呜ーーーーーー!
 远方传来渡轮到港的笛声。
 「对了,紬,为了今天的活动,静久需要拿很多东西,我就先过去帮她了」
 「好的,慢走啊——」
 羽依里离开灯塔,走向了轮渡码头。
 我为了能够看到他们的身影,就登上了灯塔顶。
 今天会发生怎样的事情呢?
 因为实在是太期待了,所以不自禁地唱出了声……。
 「姆—姆QQQQ~♪ 姆—姆QQQQ♪ 姆QQ姆QQQ~♪……♪」


 ――我就在这里――
 ――静久也在这里――
 ――羽依里也在这里――


 ――直到永远。
 我,怀着这份祈愿,纵情歌唱。